我が家の猫、太郎は、時折、目をつむって風を嗅ぐ。
風のにおいから、いったいなにを感じとっているのだろう。
風が旅してきた軌跡を読み取っているのだろうか。
それとも、誰かが太郎あてに送った便りを風が届けてくれてるのだろうか。
太郎が、風を嗅ぐ。
その横顔を見ていると、わたしはちょっと幸せな気持ちになる。
カナダには「しそ」という植物がないのに、鳥にも虫にもなぜか「しそ」は大人気だ。
意外と、虫達は新しいもの好きのミーハーなのかもしれない。
一番奥にある畑に日が陰りはじめるのは、午後3時の合図だ。
太郎が夜のおでかけから帰ってきて、ドアを開けてくれと言う。これは夜の11時だ。
わたしの毎日は最近、こんな風にすぎていく。
明日から37週目にはいり、これから毎日、いつでもtitiが産まれてくる可能性がある。
titiちゃんが産まれてくる前のこの気持ちを、今日はなんだか書いてみたくなった。
「妊娠」という経験は、変化の連続だ。
しかも、自分ではコントロールできない変化が体と心に次々にやってくる。
その最後に赤ちゃんが生まれ、さらに大きな変化が訪れる。
��人家族だった私たちから、子供を持つという人生へと変化していく。
その変化の波にするっと乗れることもあれば、荒波のあいだで溺れそうになることもある。
でも、決して溺れない。その人のやり方で、乗り越えていく。
それがこの「変化」の特徴かもしれない。
つい最近、「あと数週間後には確実にお産がやってくる」ということに急に気がつき、
「親になる」「日常が変わる」ということをリアルに実感してしまった。
最近まで、お産はいつまでも先のことの気がしていたので、急に気持ちが焦りだした。
その夜、まもなくやってくる「大きな変化」に、おののき、さみしくなって、涙がでた。
すると、ひょっこり太郎がやってきて、のどを鳴らしながらわたしの腕の中で眠りについた。
「大丈夫さ~、悩むなって。案ずるがより産むが易しさ。」
と言われたような気がして、太郎が運んできたやさしさにますますが涙がでた。
そして、そのまま私も眠りに落ちた。
翌日1日くよくよして、助産婦さんにその気持ちを話したら、すっきりした。
この変化に、溺れてしまうことはやっぱりないのだ。
もうひとつ、いつも葛藤していた思いがある。
妊娠中、いろんな自分を発見した。10代みたいなエネルギーで感情が爆発することもたびたびあった。
そんなとき、自分でひとりで落ち込んでるのならいいけど、titiもこのわたしの気持ちをシェアしてるのかもと思うと、罪悪感が襲ってくる。
この気持ちとつきあうのはなかなか難しかった。
そして、妊娠してからもっともつらかったのが、わたしが今まで見て、感じて、受け取っていたメッセージがうまく聞こえなくなってしまったことだった。
森や大自然のパワーを肌で感じる機会が減った。なぜだか、足がなかなか向かなかった。
そのチャンネルにうまくチューニングできないことが、とてもとても、もどかしかった。
わたしは、そんな自分を全部うけいれることにした。
ジャッジしないで、受け入れよう。
感情が理不尽に爆発したときも、涙がでたときも、甘っちょろいことばかり言ってるときも、
幸せを噛みしめた瞬間も、愛おしいという気持ちをはじめて感じたときも、全部受け入れた。
受け入れてしまうのを悔しい、自分に甘いとおもうこともあったけど、
わたしが自分の味方になれなくてどうする。それでいいのだ。と自分に言い聞かせた。
そうこうして、大波小波をのりこえ、10ヶ月の修行の甲斐もあって
今は、サーフボードにのかって、太陽の光でキラキラと光る水平線を眺めながら、
これからくるbig waveの波を待っている。
「高い波は、すごい水量をつれてきているように見えるけれど、あれは水でなくて海という命のもつエネルギーの大きさなんだよ。サーフィンはHarmony。海のエネルギーと、自分のエネルギーが調和したとき、すべてがひとつになる。」
その日が、もうすぐやってくるのだね。
お産は、流れに乗ることが大切だと母に言われた。
妊娠を経験している女性が、どんな想いで妊婦ライフを送っているかは、ほんと人それぞれだと思います。
わたしは「妊娠」という経験を通して、その道を通らなければ気づけなかったことをたくさん気づかしてもらった。
わたしのばあい、思い返してみると、この流れは、実は自分が決めたものだった。
去年の8月、わたしは、「未来の自分」を宇宙に放った。
それも、何度も声に出して、人の前で宣言した。
「2009年の4月末までに、大地に根をはれる場所に住み、
ガーデニングをし地球と家族に優しい暮らしを実践しはじめ、子供を授かります。」
あのとき漠然と描いていたイメージを、宇宙に放ってから1年近く経とうとしてる。
その全てが、現実となって今わたしの手元にある。
これが私にとってのベストなタイミングだったんだね。
ほんと、宇宙はすごいです。
わたしは、宇宙には「宇宙郵便局」があって、
そこに思いを送ると、その人にとってベストなタイミングで、現実を還してくれる。と信じている。
その思いがピュアであればあるほど、必ず現実になって還ってくる。
ただし、自分が思っていた姿のまんまで還ってくるとは限らないけど。
だから、ピュアな思いがあれば、どんどん宇宙郵便局に送るといいとわたしは思います。
「叶う」という字は、「口に十回出す」という意味だそう。
ほんとうだよね。
わたしにたくさんのことを気づかせてくれた「先生」である、titiちゃんに会える日まで、ほんとうにもうすぐです。
産まれてからの方が深く長い付き合いになるのだな~。
そこから、わたしはどんなことを学んでいくのかな。
わたしにひとつ、「お母さん」という役割が増えるのだなと思うと、楽しみだ。
そんなことをぼーっと考えていると、太陽が教えてくれる時間とともに、一日が過ぎる。
あしたは、太郎のまねをして、風を嗅いでみようかな。
わたし宛の風の便り、潮風と一緒にもうすぐ届くのかな。