2008年4月15日火曜日

目の奥の笑顔

TELUS SKI & SNOWBOARD FESTIVALの季節です。

街は連日大にぎわい。

ああ、冬が終わるんだなあ。
この祭りは、冬の終わりの合図です。
まるで、花火の最後の見せどころみたいに、わーっと盛り上がって、ぱっと散る。

Village Squareを通ったとき、CITTAのパティオで生ライブをしていた。
これが大盛り上がりで、パティオにいる人も、スクエアから見てる人も、音に合わせて体を揺らして踊っていた。

その中で、ひときわ目立って踊っていたインディアンのおじさんがいた。

なんで目立っていたかって?

おじさんは見るからにアルコール依存症で、破れそうな服に、ボロボロのリュックサックを背負いながら観光客に混じって踊っていた。
観光客がひしめくこの街で、ホームレスにも見えるおじさんの踊りは浮いていた。
そこにはまるで見えない壁があるみたいに、誰もおじさんに近づかない。
その壁がすぱっと、おじさんとわたしたちの間を分けていた。

交われそうで、交われない壁。
あっちがわと、こっちがわ。

ああ、残念。
わたしの目は、そんな風に物事を映してしまうなんて。

だけど、おじさんは、そこにいる誰よりも楽しそうに、踊っていた。
激しく足踏みをしたり、両手を思いきり広げたり、笑顔をいっぱい振りまいて踊っていた。

あたかも、音楽と自分が一体化したみたいに、
周りの目なんてこれっぽっちも気にせずに、
ほんとうに、ほんとうに、楽しそうに踊っていた。

あたりを見渡すと、みなおじさんを避けるので、おじさんの周りには自然と円が出来ていた。
たまに冷やかしにくる若者にも、笑顔を振りまいて踊るおじさん。
その姿は、美しくもあり悲しかった。

遠巻きにおじさんをみているたくさんの人の中に、

”自分もあれだけ人目を気にせずに踊れたらどんなに気持ちいいだろう!”

そう思った人もいたはずだった。
おじさんに拍手したいと思った人もいたと思う。
けれど、誰もおじさんの肩をたたくことはなかった。
わたしもその中の一人だった。

これがシュティカとか別のお祭りだったら、わたしもおじさんと一緒に踊れたかもしれない。
けれど、このお祭りは、世界中の一握りの裕福な人々(=わたしたち)のためのお祭りのような気がした。

世界にはまだまだ見えない壁がある。
交わるまであともうちょっと。

通りがけに、おじさんに微笑みかけると、
白く濁った目の奥から、ニコっと笑みが返ってきた。

BC州の先住民族の間で、お酒とドラッグの問題は日常化している。

私の中に、また一つ問いが生まれた。

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