ハクトウワシが戻ってきた。
川でアザラシを見かけるようになった。
それは、鮭が森に戻ってきたサイン。
森の入り口で、一匹の鮭を見つけた。
まさに、風前のともしび、命が絶える直前だった。
鮭は最後の力をふりしぼって水面に顔を出し、また沈むを繰り返す。
やがて、ともしびは静かに消えた。
わたしとしほちゃんは、ろうそくの煙のようなイノチの残像を、
しばらくのあいだみつめていた。
川から海へ、長い旅のあとの静かな死。
あーもう、ぬけがらになっちゃったんだ。
そこへ、かもめが音もなく飛んできた。
そのうち、ぬけがらは、カタチすら無くなるんだろう。
毎年、当たり前のように巡りゆくサイクル。
なんで鮭は川で産まれて、わざわざ海にいかないといけないのかな?
ずっと、川にいたっていいのにね。
誰かがいってたよ。
天から雨がふるでしょう。
山は雨に育てられ、その一部が川となる。
川が海へ流れ込む。
鮭は、山のエッセンスを海へと運び、今度は海のエッセンスを川へと運ぶ。
鮭は、山と海を繋いでいるんだよ。
自然界は、ぜんぶ繋がっているんだよ。
しぃぃぃ。
とても敏感で、神聖な時だから、静かに見守ってあげよう。
ひとつのイノチがおわり はじまるところ。
水がとても澄んでいて、冷たい。
雨の粒が、水面に完璧な円を描く。
じっとしていると手がかじかんでくる。
ピリッとする寒さに心が洗われる。
しぃぃぃ。
よくみてごらん。
熊もやってきているよ。
アタマのない鮭が地面にころがっている。
樹々は、枝を落とし、秋の終わりを告げている。
イノチのともしび、まもなく消える。
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