物心がついた頃からピアノを弾いていた。
ピアノを弾いていると無になれた。
初めは何度も練習して指と頭で曲を覚える。
楽譜を見なくても弾けるようになった頃から、
音に心をのせていく。
何も考えないでただただ、心をのせてピアノを弾く。
そういう感覚が好きだった。
実家にあったピアノは、10年以上調律されていないアップライトピアノだった。
全体的に音がずれていて、中でも「ラ」の音が思いっきし狂っていた。
もし過去に戻れるなら、ピアノの調律だけはやるべきだったと心から思うけど、
そんなことに関係なく、ただただピアノに向き合っているのが好きだった。
家がゴタゴタした時も、
友達関係がうまくいかなかった時も、
わたしにはピアノがあった。
ピアノを弾いているときは心を空っぽにして全てをリセットできた。
もしかしたら、1番の友達、だったのかもしれない。
だから、子供ができたとき、楽器を弾くことの楽しさをどうにか伝えたい。
これが、育児でどうしてもやりたいことの一つだった。
ラッキーなことに、ピアノは娘の好みにハマり、
調律しなくても音が狂うことがないデジタルピアノを、
毎日楽しそうに叩いている。よかった。
これは最近の傾向なのか、そういうスタイルなのか、わからないのだけど、
娘が行っているグループピアノレッスンでは、
テクニックを教えるだけじゃなくて
先生が情緒豊かにピアノを弾き、特には歌を歌い、
その周りで子供達が、音の起伏や表現に合わせて踊ったりもしている。
「音には魂があるんだよ。」
と、感覚的に教えてくれているように思う。
この間は、先生が、美しい雰囲気の伴奏を弾き、
子供が伴奏に合わせて、高めの鍵盤を適当に弾くという、Duo演奏をしていた。
どんなキーを叩いても、素敵な曲になるようになっているのだけど、
子供によっては、自信がなさそうに恐る恐る弾く子もいれば、
はっきりと意志を持って、鍵盤を叩く子もいる。
娘の番が来た。
娘は、ただ自由に、伴奏に合わせて鍵盤を弾いているように見えて、
「ゾーン」に入っているみたいだった。
「ゾーン」に入っている彼女のつむぐ音色は、
親バカ目を引いても美しくて、思わず聞きいってしまう。
「音は美しいんだよ。」
聴いている人たち誰もが、感じていたと思う。
娘の演奏が終わったとき、一人の女の子が、
「Wow Luna, you made me cry!」といった。
技術的なことは、大きくなるにつれて覚えればいい。
それよりも、
音が、心に響いていく感覚、
時に体が勝手に揺れてしまうような、揺さぶられるような感覚、
そういうのを小さいうちに養うことができたら、
きっと、これから一生かけて、音を愛する人に育ってくれるような気がする。
いい先生に巡り会えてよかったな。
これからも、ずっと弾いてくれたらいいな!
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